
恐怖分子
ドラマ
医師の夫と作家の妻という夫婦が、同じ場所で暮らしていながら、人としての会話がどこか噛み合っていないところが印象的な作品です。
夫は妻のことを想い、医師として昇進しようとし、妻が作家として集中できるように家に仕事部屋を用意するなど、彼なりに寄り添おうとしているように見えます。
それでも夫婦の会話の中で、妻は「あなたは私のことをわかっていない」という趣旨の言葉を口にします。何をどう理解してほしいのかを明確に説明するわけではありませんが、妻が夫との関係に不満や隔たりを感じていることは伝わってきます。そして、その不満にどう向き合えばよいのか、夫には分からないように見えました。
やがて二人は別々の生活を始めます。作品の終盤では、夫が自ら命を絶つ場面の直後、遠く離れた元妻が突然嘔吐するという身体的な異変を見せます。
たしかに妻にとって夫は「私を理解してくれない人」だったのかもしれません。それでも、長年同じ場所で生活してきた二人は、言葉では理解し合えなくても、どこか深いところでは結びついていたのではないかと思いました。
私にはあの嘔吐の場面が、離れていても相手の異変を身体で感じ取ってしまうほど、二人が分子レベルでつながっていたことを象徴しているように見えました。
会話では最後まで噛み合わなかった二人が、言葉の外側では切り離せないほど深く結びついていた。そのことを示すラストのように感じられて、涙が出るほど感慨深かったです。
